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山田宗樹:百年法(上)感想(第一部だけ)

山田宗樹『百年法(上)』を読んだ。まだ途中だけども、とてもおもしろいので書く。

 

www.kadokawa.co.jp

 

あらすじ

物語の舞台は2048年の日本共和国という架空の国。

HAVIという不老の技術によって寿命がなくなった世界。

そんな中「百年法」と呼ばれる不老処置後100年後に強制的に安楽死を導入しなければならない法律を導入するお話。

第一部では官僚の遊佐、警察官の戸毛、ユニオンと呼ばれる労働組織に属する蘭子らがそれぞれの角度から百年法に対して触れていく。

第二部は一気に時代が飛び、2076年、百年法が導入された後の話になる。

 

感想

本屋で少し立ち読みして、好みだったので読み始めたが、予想以上に面白かった。

ディストピア?SF群像劇といった感じだろうか。登場人物が多くなると話の理解が悪くなる自分を呪いたい。

 

HAVIや、百年法といった不老社会と聞くと、映画『TIME』を思い出す。

movies.yahoo.co.jp

『TIME』では25歳になると自動的に成長が止まり、その後は寿命とお金が一体となり、貧乏人は早死し、富裕層はいつまでも生きながらえる。設定はとても好きだったのだが、いかんせん話をまとめるのにラストが今ひとつだったような記憶がある。

 

一方、百年法のHAVIは、20歳以降誰でも処置を受けることができ、しかも寿命がない。そこら辺がまぁ違いだろうか。

HAVIは、もともとアメリカの技術であり、諸外国でも導入されている。しかし、日本のみHAVI処置後の寿命(百年法)を設けておらず、国際社会から批判されている。

諸外国での百年法はばらつきがあり、アメリカは100年、韓国は40年だがスポーツや学問に優れた人物は延長できる、中国は金銭の有無によって延長出来るらしい(うろ覚え)。

HAVIが発明されたのは太平洋戦争前で、2048年まで百年法を導入していない日本はアメリカはおろか韓国や中国にも大きく経済的に遅れを取っているらしい。

日本は百年法を導入する準備をなんとか進めるが、直前になって首相が国民投票にすると言い出す。理由は百年法はアメリカから押し付けられたようなものだからだと首相は説明する(しかし実際には政治家が死にたくないから)。そして、反対多数により法律は凍結される(まぁ5年後に施行されるのだけれども)。

 

この辺の設定が、リアリティがあってとても引き込まれた。諸外国では当たり前のものが導入されておらず批判を浴びているところ、経済・技術の面で韓国や中国に大きく遅れを取るところ、アメリカに押し付けられた法律だと理由づけて凍結しようとするところ、そして流されるように本当に凍結してしまうところ、いずれも現代社会の延長線として考えられるようなものばかりで、身につまされる。

SF的に見ると、作中で登場するカプセルやグリップといったアイテム、不老化によって見た目が変わらなくなったことに対する描写は、現代の延長線といったところが強調されてしまうような気がするが、楽しめた。

 

第一部ではなんとしても百年法を導入したい官僚の遊佐、導入したくない警察官の戸毛、あまり百年法に興味がない蘭子といった三者がメインで話が進む。それぞれは独立しており、互いに絡むことはない。

個人的には官僚的上から目線の遊佐があまり好きになれない。しかし、必死に法律を導入しようとする姿に感情移入してしまう自分もいる。

 

一番自分から近いと思ったのは警察官の戸毛だ。戸毛は警察官でありながらも必死に百年法導入後に生き延びるための方法を探すため、テロリストの阿那谷童仁へのつながりを探す。戸毛がそこまでして方法を探るのは、もし百年法が導入されれば初年度の対象者となるからで、それを避けるためだ。もし、自分が百年法の世界にいたら戸毛のように必死になって生き延びる方法を探すかもしれないと思った。

 

一番自分から遠く感じたのは、蘭子だ。蘭子はユニオンと呼ばれる組織に属している。ユニオンでは、永年の労働が約束されており、豊かではないが安定した生活を送ることが出来る。蘭子は、百年法の対象となるのが22年後であるためかそこまで百年法には固執していない。物語のなかで100年法の議論が進んで行くがそこまで興味を持つこともなく、日々を過ごしている。蘭子は、ある日同い年だった川上美奈の娘由基美や、同僚の篠山との関わりのなかで、もし百年法が導入されたらと考えると、永遠に終わることのない人生が待っている事に気づく。

読者の自分からすると、そもそも不老不死願望があるので蘭子の考えには同意できない。永遠に生きることの恐怖はわからなくもないが、HAVIは不老ではあるが不死ではないのでそこまでの絶望ではないのではないかと思ってしまう。

 

百年法の世界では、法を導入しない事によって経済の停滞や失業者の増加といった問題が出ている。国の将来のために法律を導入したい遊佐、個人の感情として死にたくない戸毛、やや客観的に状況を見る蘭子がそれぞれ良い働きをしていて、読み応えがあった。

 

俳優の岡田准一が紹介して、実写も期待されているらしいが、実写化するのは難しいんじゃないかなーと思う。いや、実写されたものはぜひ見てみたいけれど。やっぱり「TIME」があるからどうしても尻切れトンボになってしまうんじゃないかと思ってしまう。

それはそうと、物語に出てくる三日旗ってどんなもんだろうか。三角形のペナントの頂点に丸がついているのを想像したけれど、人に話したところ四角い旗に三角形が入ってその頂点に日の丸じゃないかと言われたので、とても気になる。

 

第二部以降を読み終えてから(上)の感想を書こうと思ったが、思った以上に面白かったので、書いてしまった。続きも読んだら書こうと思う。